線形代数を学び始めると,必ず登場するのが固有値と固有ベクトルです。
名前だけ見ると難しそうですが,実は
「行列が持っている“特別な方向”と“伸び縮み率”」
を表しているだけです。
この記事では,
- 行列式と固有値
- 線形変換としての行列
- 固有方程式
という順番で,直感を大切にしながら説明していきます。
1. 行列式と固有値の関係
行列式とは何を表しているか
まず,\(2 \times 2\) 行列
$$ A = \begin{pmatrix} a & b \ c & d \end{pmatrix} $$
の行列式は
$$ \det A = ad – bc $$
でした。
この数は,
- 面積を何倍にするか
- 向きを反転させるかどうか
を表しています。
たとえば,
- \(\det A = 2\) なら「面積を2倍」
- \(\det A = 0\) なら「平面をつぶす」
という意味になります。
固有値は「特別な倍率」
固有値 \(\lambda\) は,次のような意味を持つ数です。
「ある特別な方向のベクトルを,\(\lambda\) 倍するだけの変換」
この「倍率」が固有値です。
行列式は「全体の体積(面積)の倍率」でしたが,
固有値は「特定の方向に限った倍率」だと思ってください。
2. 行列は線形変換である
行列は「計算ルール」ではなく「変形」
行列 \(A\) をベクトル \(\mathbf{x}\) にかける
$$ A\mathbf{x} $$
という操作は,
ベクトルを回転・伸縮・せん断する操作
だと考えると理解しやすくなります。
例えば,
$$ A = \begin{pmatrix} 2 & 0 \ 0 & 1 \end{pmatrix} $$
を考えると,
- x方向は2倍
- y方向はそのまま
という変形をしています。
普通のベクトルは向きが変わる
一般には,ベクトル \(\mathbf{x}\) に行列をかけると,
- 向きが変わる
- 長さも変わる
ということが起こります。
しかし,ある特別なベクトルだけは違います。
向きが変わらないベクトル
行列 \(A\) によって,
$$ A\mathbf{v} = \lambda \mathbf{v} $$
となるベクトル \(\mathbf{v}\) が存在することがあります。
このとき,
- \(\mathbf{v}\):固有ベクトル
- \(\lambda\):固有値
と呼びます。
つまり固有ベクトルとは,
行列をかけても「向きが変わらない」ベクトル
なのです。
3. 固有方程式はどうやって出てくるか
定義から式を作る
固有値・固有ベクトルの定義は
$$ A\mathbf{v} = \lambda \mathbf{v} $$
でした。
右辺を左に移項すると,
$$ (A – \lambda I)\mathbf{v} = \mathbf{0} $$
となります。
ここで \(I\) は単位行列です。
「ゼロでない解」が存在する条件
この式が意味を持つためには,
$$ \mathbf{v} \neq \mathbf{0} $$
である必要があります。
線形代数では,
\((A – \lambda I)\mathbf{v} = \mathbf{0}\)
がゼロでない解を持つ
⇔ \(\det(A – \lambda I\) = 0)
という事実がありました。
固有方程式
したがって,
$$ \det(A – \lambda I) = 0 $$
この式を固有方程式と呼びます。
これを \(\lambda\) について解くと,
固有値が求まります。
具体例(2×2行列)
$$ A = \begin{pmatrix} a & b \ c & d \end{pmatrix} $$
のとき,
$$ \det(A – \lambda I) = \det \begin{pmatrix} a-\lambda & b \ c & d-\lambda \end{pmatrix} $$
$$ = (a-\lambda)(d-\lambda) – bc $$
これを0とおいた二次方程式が,固有方程式です。
まとめ
- 行列式:全体をどれだけ伸ばすか
- 線形変換:行列は空間を変形する操作
- 固有値:特別な方向の伸び縮み率
- 固有ベクトル:向きが変わらない方向
- 固有方程式:\(\det(A – \lambda I) = 0\)
固有値・固有ベクトルは,
「行列の本質的な性質を抜き出したもの」です。
この視点を持つと,
対角化,微分方程式,データ分析(主成分分析)など,
多くの話題が一気につながって見えてきます。



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