対象読者:経済学部生(卒論・ゼミ論・研究大会)
想定論文:実証なし/理論中心(数式あり)
ゴール:「何を書けばよいか分からない」を完全に解消する
はじめに:理論論文は「文章で考え方を説明する」
経済理論論文というと、
- 数式が多くて難しそう
- 何から書けばいいか分からない
- モデルを立てたけど、文章が書けない
と感じる人が多いと思います。
しかし実際には、良い理論論文ほど「文章」が明確です。
数式は「結果」
文章は「なぜそうなるか」
このブログでは、
- 論文全体の構成
- 各章・各セクションの目的
- それぞれで「何を書くべきか」
- 初学者がつまずきやすいポイント
を テンプレとして使えるレベル まで具体化します。
論文全体の構成(まずは全体像)
理論論文の標準的な構成は以下の通りです。
- Introduction(導入)
- Related Literature(先行研究)
- Model(モデル)
3.1 Economic Environment
3.2 Preferences / Constraints
3.3 Timing & Information - Equilibrium & Basic Properties(均衡と性質)
- Mechanism & Main Results(メカニズムと主要結果)
- Extensions / Special Cases(拡張・特殊ケース)
- Conclusion(結論)
重要:
- 「モデル → 均衡 → メカニズム」が理論論文の三本柱
- 実証章は存在しません
1. Introduction(導入)
目的
「なぜこの論文を書く必要があるのか」を伝える
読者(教員・審査員)は、まずここで
- 面白いか?
- 何を解こうとしているのか?
を判断します。
構成と書く内容
第1段落:問題意識(5–6文)
- 現実の現象 or 理論的な違和感
- なぜそれが重要か
ポイント:
- 数式は書かない
- 専門用語は最小限
第2段落:既存研究の限界(4–5文)
- これまでどう説明されてきたか
- 何が説明できていないか
ポイント:
- 批判しすぎない
- 「不足」を淡々と述べる
第3段落:本論文の貢献(最重要・5~6文)
This paper makes three contributions.
- 新しいモデル設定
- 新しいメカニズム
- 得られる含意
ポイント:
- 箇条書き的に明確に
- 曖昧な表現を避ける
第4段落:結果の要約(3–4文)
- 命題の内容を「言葉」で説明
第5段落:論文構成(2–3文)
- 第2章では〜、第3章では〜
2. Related Literature(先行研究)
目的
自分の論文の「立ち位置」を示す
書く内容
- 最も近い論文との違い
- より広い分野との関係
ポイント:
- 長く書かなくてよい
- 「どこが違うか」を明確に
3. Model(モデル)
この章の目的
後の結果が「必然」になる世界を定義する
3.1 Economic Environment
目的
モデルの世界観を提示する
書く内容
- 主体(家計・企業など)
- 時間(離散・連続)
- 不確実性の有無
- 情報が完全か不完全か(詳細は後)
各構成要素につき6~10文
ポイント:
- 抽象的でOK
- 「存在する」ことを述べる
3.2 Preferences / Constraints
目的
主体が何を最大化し、何に縛られているかを示す
書く内容
- 効用関数
- 制約条件
📌 数式1個につき:
- 定義:1文
- 経済的意味:2–3文
ポイント:
- 数式1つにつき、必ず説明文を書く
- 「何を表しているか」を言葉で
3.3 Timing & Information
目的(超重要)
情報と意思決定の順序を一意に固定する
書く内容
- いつショックが起きるか
- 誰が何を観測するか
- いつ意思決定するか
- 期待がいつ固定されるか
ポイント:
- 3.1の繰り返しではない
- 因果関係を明確に
- 箇条書きや図を使ってもよい
4. Equilibrium & Basic Properties
目的
モデルがどう動くかを数学的に定義する
書く内容
- 均衡の定義
- 存在・一意性
- ベンチマークケース
ポイント:
- 技術的な証明は付録へ
- 本文では「意味」を説明
5. Mechanism & Main Results
この章の正体
数式で得られた結果を、日本語で説明する章
各結果について書く構成
- 命題(何が起きるか)
- なぜ成立するか(因果順で説明)(10~12文)
- どの仮定が効いているか(4~5文)
- 他モデルとの違い(3~4文)
「なぜ成立するか」の書き方(重要)
- 数式操作は書かない
- 主体の行動 → 集計 → 均衡
- 10文前後で一本道に説明
ポイント:
- because を心の中で入れる
- 「なるほど」と言わせる
6. Extensions / Special Cases
目的
結果がどこまで一般的かを示す
書く内容
- 仮定の緩和
- 特殊ケース
📌 各拡張につき:
- なぜ重要か:2文
- 何が変わるか:4–6文
ポイント:
- すべて解かなくてよい
- コアメカニズムが残るかを示す
7. Conclusion(結論)
目的
読者の記憶を整理して終わる
書く内容(8–10文)
- 問いの再提示
- 主要結果
- 理論的含意
- 今後の課題
ポイント:
- 新しい結果は書かない
おわりに:理論論文は「構造」で書ける
理論論文は、才能よりも 構造理解 が重要です。
- 各章には明確な役割がある
- 書くべきことは決まっている
- 数式は「補助」、文章が主役
この構成をそのまま使えば、
- 卒論
- ゼミ論
- 学部生研究大会
すべてに対応できます。
「何を書けばいいか分からない」から卒業しましょう!



コメント